CALEND-OKINAWA(カレンド沖縄)

L’abbraccio(ラブラッチョ)
人気ピッツェリア「BACAR」のカフェがオープン。種類豊富なピッツァ、こだわりのコーヒーもテイクアウト可。


 
「こんなピッツァは食べたことがない」
と、初めて口にした人ならきっと誰しもが思うだろう。
そして、必ずもう一度食べたくなる。
 
カリッとした歯触りにもっちりと伸びる独特の生地、
フレッシュなことこの上ないトッピング、
鼻を刺激するさまざまな香り、オイル、ハーブ、ペッパー、オリーブ・・・
次から次へと襲ってくるそのすべてが斬新で、美味しく、一瞬で魅了される。
 

 
ランチにつくドリンクも一癖アリ。
「コーヒーの一番美味しい部分」という濃い液体に
凍らせたはちみつ、ミルク、コーヒーがバランスよく入れられた
「美栄橋オーレ」。
添えられたミルクをゆっくり注ぐと・・・
 

 
美しいマーブル模様を描きながら、ミルクとコーヒーが混じり合っていく。
 

 
「普通の氷ではないので、溶けても最後まで美味しいし、
味わいも微妙に変化していくので面白いんですよ。
ドリップの仕方や蜂蜜にもこだわってます。」
 
ランチセットでは4種類のトッピングを乗せたピッツァに、
美栄橋オーレ、レモングラスティー、ホットコーヒーなどからドリンクを選べる。

 
久茂地のピッツァ専門店「BACAR(バカール)」には、
県内のみならず広く全国からその味を求める人々がやってくる。
BACAR のピッツァイオーロ(ピッツァ職人)である仲村さんは、
 
「コンセプトもやることもしっかり決まっている BACAR ではできないことをやりたくて。」
 
と、L’abbraccio(ラブラッチョ)オープンの理由を明かす。
 

 

 
- – - 不満のなかった仕事を辞め、本当にやりたいことを求めてイタリアへ。
 
最初は、親がつくった会社で働いていました。
建設関係の会社で、公共工事なんかを請け負って。
やりがいはすごくあったし、時間にもお金にも不満はなかった。
でも、自分が本当に心からやりたいことができていない、そこだけが足りなかったんです。
だから、不満はないけれど物足りなさはありました。
つくられた環境の中で働いていたわけですから。
 
それで、「自分の好きなことってなんだろう?」と考えるようになって。
25〜26歳の時だったかな。
やりたいことは漠然としていて見えなかったけれど、仕事を辞めたいと申し出て。
家族からも快く応援してもらえました。
それから1年ほどかけて仕事を引き継ぎ、イタリアに向かったんです。
 

 

 
- – - ナポリのピッツァは感動一歩手前。理想とは違った。 
 
そのとき、自分が進む方向性はまったく決まってなかったですね。
飲食業という枠すらなかった。
でも、手に職をつけたいなというのはあって。
食べることはもともと好きだし、バイトをしていたこともありました。
そして、イタリアにはずっと興味があった。雰囲気が好きだったんです。
5〜6年住んでみたいなと思って行ったんですが、
実際は3ヶ月くらいで帰国しました。
 
ピッツァは興味のあることの一つだったので、
イタリア滞在中、ナポリで1ヶ月くらい毎日ピッツァを食べました。
ナポリのピッツァは美味しいと有名なのでそれを求めて行ったのですが、
どこで食べても感動一歩手前くらいだったんですね。
僕の中で期待がすごく膨らんでたんです、
「ナポリのピッツァってすげーんだろーなー」って。
実際美味しいですよ、食材も新鮮だし。でも僕の理想とはちょっと違う。
向こうはやっぱりピッツァって500円の食べ物であって、それ以上の仕事にはなっていないというか。
だから、自分のすべてをかけて、そこで生活しながら追求するまでのものではないと感じて、
それで日本に帰ってきたんです。
 

ミニサイズのピッツァは各150円と値段も可愛らしい。「オーブンで焼くと鉄窯とはまた違った美味しさが出ます。」
 

手前から、ポテトローズマリー、アンチョビケーパーモッツァレラ
 

マリナーラ、マルゲリータ
 

ツナタマゴ、プッタネスカ 
 
- – - 食べた瞬間「なんじゃこりゃ!」。すぐにそこで働き出しました。
 
一旦沖縄にもどって、「どうしようかな?」と。
フルーツや野菜がうまかったから、それを作ってみようかなと種子会社に連絡して、植えてはみたけどなんか違う。
全部を自分でできない。
自分がやりたいことはこれではないな、じゃあ何がしたいんだろう?と。
 
そうして改めて好きなことを考えると、
粉を使ってやる作業、薪・・・という感じで
やっぱりピッツァのことがばーんと浮かんじゃって。
それで東京に向かいました。
実は、イタリアへ行く前に東京の店も何軒か回ったのですが、
すべての店に行ったわけじゃないし、もう一回確かめて来ようと思ったんです。
それでも見つからなかったら、理想に近いものを自分が作っていけば良いんじゃないかなと。
 
それで最初に行ったお店が、その後お世話になった店。
食べた瞬間「なんじゃこりゃ!」って感じでした。僕の理想にすごく近くて。
結局その後20軒くらい行ったのですがやっぱりそこがよくて。
そうして飛び込んだのが7~8年前。27歳のとき。
 
それからは本当にあっという間でした。
やりたいことをやっと決められたから強いんですね。
めまぐるしい日々でしたが、やめたいと思ったことはありませんでした。

 
 
— 仲村さんは東京で4年働いたのち、
沖縄に帰ってきて「 BACAR 」をオープンさせた。
 

ラブラッチョアイスコーヒー
 

 
- – - 焼く瞬間の緊張感は変わらない、だから飽きない。
 
進む道としては他の選択肢もありましたが、ピッツァへの興味が一番強かった。
それがどうしてかと訊かれると、
好きなものってなかなか説明できないんですよね。
 
今ではピッツァの良いところだけじゃない、さまざまな部分も含めて全部が好き。
だから「なんで好きなの?」と言われると、
「雰囲気が」とかしか答えようがなくて。
 
生地や火や窯ってコントロールできないじゃないですか。
だから、生き物なんですよね。
毎日違うし、同じ日でも焼く度に違う。
また僕の機嫌も違うから、生地、窯、焼く人という三つの生き物がいつもせめぎあってるんですね。
それが「ばちっ」とはまればすごい。
そこかもしれないですね、好きな理由は。
 
緊張感がずっとあるんですよ。
単純作業に見られがちなんですけど僕の中では一枚一枚全然違って。
ピッツァを焼く瞬間の緊張感って最初からずっと、今でも変わらないですね。
一日の中で、店の営業時間の間はずっと集中できる、「しゅっ」と入っちゃうんです。
緊張感や怖さがないと良い仕事ってできないと思うんですが、
意識してやるものでもないし、
自然とそうなれるのが僕にとっては多分ピッツァなんですよ。
だからやめきれない。
僕、結構飽きっぽいんですよ(笑)。だけどこれは飽きない。
 
仕事としては捉えてないですね、毎日やることのひとつというか。
 

 

 
- – - BACAR とは違う空間。親しみやすく、自由な店に。
 
店をここに決めたのは、住みたいくらい場所が気に入ったから。
僕、角地フェチなんです(笑)。
目の前が交差点なので、風景を見下ろす感じも好きで。
 
そして、BACAR ではできないことをやりたいと思ってオープンさせました。
BACAR はスペースも限られているし、雰囲気もやることもかっちり決めているので、
自由に色んなことができる店が欲しかったんです。
 
鉄窯で焼くBACAR のピッツァはマリナーラとマルゲリータの二種類のみなんですが
L’abbraccio ではオーブンで焼くので具材も色々とりいれています。
お惣菜ピッツァみたいな感じかな。
カジュアルで親しみやすいメニューをそろえました。
また、BACAR ではその場でできたてを味わっていただきますが、
L’abbraccio ではテイクアウトも可能です。
 
コーヒー豆は potohoto(ポトホト)(関連記事:potohoto コーヒーが苦手だった店主、自家焙煎豆の美味しさの基準は「甘さ』)の山田哲史さんにお願いし、
L’abbraccioの空間やコンセプトに合うように豆を選んで焙煎して頂いています。
また、「potohoto でできないことをやりましょう」と提案もして。
例えばいやらしいコーヒーとかね(笑)。
ここでしか飲めないコーヒーをお出ししています。
 
BACAR はエスプレッソのみで、ナポリのブランドの豆を使っているのですが
美味しいだけでなく僕の思い入れもあるので、あっちはもう変えられない。
だけどコーヒーでも色々やりたかったので、L’abbraccio では自由に。
 
ほかにもやりたいことが沢山あるんですよ。
店長の今村は陶芸もやっているんですが、
彼や知り合いの作家さんの作品の企画展示もやりたい。
 
メニューもこれから増やしていきたいし、
内装もこれで完成じゃなくて・・・
そうそう、ソファーも張り替えるんですよ(笑)。
どんどん変わっていく予定です。
 

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新メニューとして登場予定、トリッパ(トマトベースのイタリア風もつ煮込み)のサンド。
 

まかない料理のナポリタン。「ナポリタンとかグラタンみたいな懐かしいメニューもこれから出していきたいですね。」
 

左から店長の今村さん、仲村さん。「こっちはまかせているので、僕はこうして美味しいコーヒーを飲んでいられます(笑)。」
 
迷いというものを感じさせない人だ。
 
不満のない仕事を辞めるときも、
数年住む予定だったイタリアを数ヶ月で離れるときも、
東京から沖縄にもどって来るときも、
そして、新しい店を出すときも。
 
それは多分、自分の心に忠実に生きているから。
安定よりも、本当にやりたいことを求め、
ある程度のレベルよりも、さらに上を目指す。
 
東京で学んだピッツァに、仲村さんのオリジナリティが加わっていると思いますか?と尋ねると、
 
「加わってると良いなーと思うんですけどね。
最後はそこにたどりつきたい。
最初は教わったことを忠実にやっていくべきだと思いますが、
土地も違う、人も違う、そして僕も変わっていきますから。
目をつぶっても、
『あ、これは俺のピッツァだ』
ってわかるところまで行きたいですね。」
 
と微笑んだ。
 
ストイックだがフレキシブル、
仕事にはシビアだがユーモアは忘れない。
仲村さんの持つ二面性のうち、
BACAR では発揮されない面が十分に生かされている L’abbraccio 。
やりたいことをとことん突き詰めてできた空間は、
誰にとっても居心地の良いスペースとなっている。
 

L’abbraccio(ラブラッチョ)
那覇市前島1-1-1 3F
098-911-5900
ブログ http://abbraccio.ti-da.net
BACAR HP http://bacar.ti-da.net
 



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